伊勢角屋麦酒社長である鈴木成宗さんの書かれた「発酵野郎―世界一のビールを野生酵母でつくる―」を読みました。
ちなみに目次はこんな感じになっています。( https://www.shinchosha.co.jp/book/352741/ より)
はじめに
1章 餅屋で終わってたまるか
ビール造りはサイエンスである/伊勢から世界へ通じる道とは/「生きもの好き」が人生の道しるべ/「科学」の世界で必要なこと/家訓は「家訓を持たない」こと/餅屋で終わってたまるか
2章 ビール造りの天国と地獄
法律に翻弄された「地ビール」/父が反対しなかった理由は「かわいそう」/すべては順調に見えたのに/騙されての飲食店経営/ビール造りで壁にぶちあたって/過信と健全な自信のあいだ/給料ゼロ円の意味するところ/第一次クラフトビールブームの終焉を見る/開店休業状態の長い日々をどうしのいだか/世界一の頂に、審査員のルートで登る/マイケル・ジャクソンの角屋訪問/何も起きなかった、静かすぎる「世界一」/失敗しまくるが勝ち/必死にやっていると救世主が現れる/「マーケティング」にやっと気づく/ブランドを2つに分ける
3章 ビール・サイエンスラボを目指す
研究開発型ブルワリーへ/ビールの「スタイル」を追究していく/クラフトビール造りの醍醐味は何度でも失敗できること/2位じゃ、やっぱりダメなんです
4章 無限の酵母愛を胸に
発酵によるはかり知れない恩恵/目に見えない命を食べて生きている/酵母を探すなら、虫になれ/神様が愛する多様な自然環境/ビールの酵母を伊勢の森から/社長業と大学院生の二足のわらじ/じゃじゃ馬なHIME WHITE/酵母は生きもの、だからビールも生きもの/「ランビック」、例えばこんな酵母が好きだ/次なる夢のビールはこれで/二度と再現できないビール/尊敬する「発酵偉人」
5章 50歳にしてやっと自分も発酵してきた
発酵を促す土地「東京」/いろいろとやりすぎていたオレ/「非常識」にふるまってみよう/無人島での酵母採取の結果/発酵しちゃっている「変人」たち/ニューヨークのレジェンドに出会えた
6章 伊勢をもっと発酵させてやる
情報の集積地である、船着き場で街道筋/ホームブルーイング特区構想/まずは伊勢から「三重県クラフトビールの会」/伊勢商人魂よ、ふたたび/伊勢の良さがわかるのはよその人
7章 こんな奴が成功しているクラフトビール界
ライバルはと聞かれたら/反骨精神を表現するビール/度肝を抜かれたうまいビール/審査は誰でもできる、鍛えられる/オレの飲みたいビールはこれだ/世界に広がるクラフトビール
8章 日本のクラフトビール新時代に
クラフトビールの業界動向を読む/ワインを追撃するクラフトビール人気/ブルワーはジャニーズよりも人気?/8000リットルのビールを捨てました/引き算と足し算の繰り返し/いちばん信頼し、いちばん怖い
9章 オレ流発酵組織論
餅がダメなら味噌がある/上場は目標になりうるのか/「のれん分け」と「田分け」の違い/すべてを決めるのはオレだ/小さく素早く始めて、ダメならば修正する/動物園で珍獣と暮らす/来たれ、発酵好きよ/同室になった世界のクラフトビールのレジェンド
おわりに
番外編 クラフトビールの愉しみ方
ここ数年クラフトビールのお店に行ったり、イベントに参加したりするうちに、伊勢角屋麦酒のビールを飲む機会も多く、だいたいどのビールも美味しかったので、好きなブルワリーの1つになりました。個人的には、ここのペールエールは間違いなく美味しい。
また、2017年くらいにNE-IPAの「ネコニヒキ」を飲んだときは、こんなビールがあったのか!と感動した記憶が残っています。
その中で、この書籍が発売されることを偶然クラフトビールパブの店員さんから耳にして読もうと思っていたものの、なかなか手にできていなかったのですが、地元の図書館に所蔵されていることを知ったので、速攻で予約して読みました。
1575年から、約450年続く餅屋「二軒茶屋餅角屋本店」の跡取りでありながら、微生物(酵母)に興味を持ち、クラフトビール造りを始められた鈴木氏。どんな方かは詳しく知らなかったのですが、本を読む中で非常に行動志向の強い方だなという印象を持ちました。
また、自然酵母を自身で採取して、それを使った麦酒を作るというのが紹介されていましたが、他でこういうことをされているブルワリーはほとんどないそうで、こだわりの強さも見られました。
そのこだわりの方法で、特に成功した「ヒメホワイト」というビールがあるそうです。実はこのビールをどこかで飲んだことはあるのですが、他のビールとの違いをはっきりと覚えていなかったので、また改めてしっかり味わってみたいなと思いました。
また、第一次クラフトビールブームのことが書かれていて、参考になりました。当時はクラフトビールというよりは、観光ついでの”地ビール”として取り扱われ的に飲まれるケースが多く、価格の割に美味しさが伴わないブルワリーも多かったために、ブームがすぐ下火になったとのこと。
当時はまだクラフトビールを飲める歳ではなかったので、どれほどの味だったのか気になる部分もありますが、今は新たなクラフトビールブームの流れでブルワリーもかなり増えて、実際美味しいビールが多いので、当時よりも更に美味しさが求められているのだろうと思います。消費者としては嬉しい限りですね(^^)
クラフトビールのこと以外では、伊勢神宮近くという土地柄のことも書かれていて、全体的に興味深く読めました。神様のいる場所の近くで採れた酵母を使った麦酒というオリジナリティを活かしたいというのは、なるほどと思いました。
鈴木社長の今後の挑戦(ランビックや(酵母が一時的に放つ)黒糖の香りを付けたビールの開発など)も注目していきたいです。